昔スーパーのリニューアルや新規出店などで修正ハフモデルを使った売上予測などをよくやっていました。

ハフモデルというのは、出向比率(ある地域からその店・地域にやってくるだろう人の割合)は、「売場面積に比例して距離の2乗に反比例する」といったものです。

人口や距離から吸引力や商圏分岐点を分析するライリーの法則、コンバースの法則というものがありましたが、米国の経済学者ハフ氏が面積を因子に加えたハフモデルを発表し、日本では1989年頃に当時の通産省が大規模小売店舗法などで近隣商店街などへの影響をみるのに日本の現状に合わせて、時間距離を物理的距離に置き換え、距離抵抗係数λを2に統一し、修正ハフモデルとしたとのことです。

仮説商圏内の世帯数や人口などを知った上で、出向比率から来店客数を予測し、あとは家計調査年報などからお店の業種で消費される品物の1世帯当たり年間消費額を掛け合わせれば売上予測がでるわけです。

しかしながら、計算の要素としては売場面積と距離しかなく、幹線道路、路線、河川などといった商圏分断要因は考慮されていませんので、実際の地形、現場を見て仮説商圏範囲の初期設定が重要になるのではないかと思います。いくら距離が近くても、よほどでないとちょっとここからは店に行かないよね~と思われる地域は結構あるわけです。

また、「売場面積に比例する」といったことからもわかる通り、売場面積が大きいほど品ぞろえや魅力があるということを前提としているのでしょうから、小さな店舗(個人商店や小さな飲食店とか)には向きません。ある程度大きな売場のあるスーパーマーケットに向いていると思います。

また、昔と違って現代の買い物行動は多様化しているため(特にネットとか)、修正ハフモデルだけで正しい予測ができるかというと難しいですよね。

でも、全く使えないのか?というとそうすてたものでもないかと思います。

昔の自分の店でやったときの例で言えば、小型店の増床リニューアルの際、私がやった売上予測で、年間8億9千万の予測に対して1年目の実績が9億ちょっとといった例もありました。

しかし、そこまでピッタリ当たらなくても、概ね使うには問題ないのではないでしょうか。

というのは、何のために売上予測がしたいのか?というと、たいていの場合、事業計画の採算が合うかどうかが知りたいわけです。
金融機関に出す事業計画作成の際には、かために計画しますので、予測売上高も少々低めに見ておくようにしていますので、その低めに予測した数字で損益計画が立てられれば目的は十分達成できるわけです。

特に修正ハフモデルを使った場合、前述のような他の要素は全く無視しているので、算出された数字よりもググっと低めに見ておくとか。。。

私が実務で使っていた時は、算出された数字だけでなく、既存店舗の坪当たり売上や駐車場の台数、近隣競合店と自店との競争力など(この辺は数値化できず、肌感覚ではありますが)を考慮して、7掛け~8掛けくらいで見て、採算が合うかどうかを検討していました。

それにしても、こうした人口、世帯数情報は、昔は市区町村の役場へ出向いて住民基本台帳などから見せてもらえる範囲を、コピー代を払ってコピーしてもらっていたものですが、今では、jSTAT MAPで簡単に確認でき、地図上にも視覚化できるのですから便利な世の中になったものです。ただし数字の情報は国勢調査のデータなので2015年のものです。
直近の人口、世帯数が知りたければ、市区町村のHPから住民基本台帳ベースのデータがダウンロードできます。

昔はこんなGISが無料ではないので、私の場合は地図上でマップメジャーとかを使って距離計測をしていました。

500mや250mの地域メッシュ地図を使用する場合は簡便な計算方法として、メッシュ間の距離計算をピタゴラスの定理を使うのが一般的でしょう。

でもせっかくjSTAT MAPに距離計測機能がついているので、それを使って修正ハフモデルの検証をしてみました(お遊び程度ですが。。。。(^_^;))

修正ハフモデルの検証

★ずっと以前に商圏調査をした、都内のとあるスーパーをモデルにしています。
来店手段が徒歩と自転車しかないお店なので、商圏範囲は最大でも半径1km程度(自転車での一次商圏)だと想定されます。
商圏強度法を使った実査を何度も経験していますが、坪売上の高い繁盛店などですと、半径2.5km~3kmくらいまで商圏が広がっていたケースもありましたが、大抵の小型店(徒歩、自転車)でみると私が経験した中では500m~1kmがほとんどでした。

一旦、500mと1kmで仮説商圏をとってみましたが、1kmって、思っているより結構広くて、都内だとほとんどの場合500mくらいの間に商圏分断要因である河川、路線、幹線道路で遮られているケースが多いです。

単に距離感だけで仮説商圏を広げるのではなく、この辺は実際の現場や地形をよく観察、実査して、本当に来店してきそうなのかどうかを見ることが重要だと思います。

そこで、そうした商圏分断要因を考慮して仮説商圏を再設定してみると、やはり概ね半径500mくらいがせいぜいだろうと想定されました。

※画像はモザイクを入れています

(出所:jSTAT MAP 「 政府統計の総合窓口(e-Stat) 」を元に加工作成)

地域メッシュコードに合わせた世帯数を抽出するのも jSTAT MAP で簡単にできますが、メッシュ地図上で位置を確認する必要があります。

あとは、jSTAT MAPの距離計測機能を活用して距離を出し、エクセルでチャチャっと計算しておわりです。。。(^_^;)
ちなみに、この店は日用品、酒、たばこは置いてないので、家計調査年報からは外しております。

結果は、、、推定売上高予測:約898百万。

となりましたが、実はこのモデル店の2014年期末の売上高は720百万円でした。
だいたい予測値の8掛けくらいの数字ですね。

ただ、このお店もかなり業歴の古いお店で、店舗の老朽化で昔と違って競争力も落ちてきています。売上高も年々落ちてきているので、もしかしたら出店した当時はこれくらい売上げもあったのかもしれません。
また、立地地域のポテンシャルとしてはあるのかもしれないので、リニューアルなどして競争力を高めれば、それくらいの数字が見込めるかもしれませんね。

ただ、前述した通り、修正ハフモデルの数字だけでなく、既存店があればそちらの坪当たり売上なども参考にした上で、低めに計画した方が良いでしょうね。

このように売上の予測って、様々な要因が絡み合っていますので、大金を払ってこうした計算機能の付いたGISを購入しても、ピッタリと売上予測ができるわけではないだろうと思います。

やっぱり実際に現場の立地や地形、道路付きなどをじっくりと実査して、最後は経験と肌感覚(笑)が重要かな~と思います。今までそれでやってきてましたからね~、、、科学的じゃないといわれるかもですが(;^ω^)


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