経歴柄、小売業のご支援をすることが多いのですが、店舗商売はどうしても外部環境要因に左右されやすく、特に競合店の出店があるとその影響が出ないことはありません。

食品スーパーも取扱商品がほとんどコモディティですから差別化要因もなく、売場面積と距離の法則に大きく左右されてしまいます。

そこで小売業はビルドアンドスクラップしていかざるを得ないのですが、まだまだ何とかなりそうなお店であれば、すべてを外部環境のせいにしてないで、内部の努力(インストアマーチャンダイジング)で売上アップできる可能性があります。

もうずいぶん前にご支援に入った、とあるスーパーでの成功事例をご紹介すると、、、もともと改善計画をつくって別の方にコンサルティングを受けていたお店ですが、売上の落ちがとまらないので、支援してほしいと依頼を受けました。

まずは部門の中でも前年対比トントン(落ち込みの少ない)の比較的”ツイている部門”を調べると、精肉部門でした。
精肉は比較的大パックが受け入れられやすく、一点単価アップがやりやすいので、主通路の平ケースを大パックコーナーにするよう提案したところ、他の部門チーフからも「当店は高齢者や単身者が多いので少量パックの方が。。。」という反発がありました。
そこで”政府の地図で見る統計”のデータが役立つわけですが、当店の半径500m商圏内の世帯人員別世帯数のデータを見せ、二人世帯以上の家族も十分多いことを示したところ意外そうな反応を見せていましたが、”2~3人世帯家族も多いのに、今まで競合店に良いとことられちゃってるんじゃないの?”と言うと、しぶしぶ納得し、平ケースにお肉の大パックコーナーを展開。

結果、、、翌月から毎月の売上前年対比120%越えが1年間続きました。精肉チーフだけ、その夏はボーナスが(笑)
それをきっかけに他の部門もすこし取り組み方が変わってきたので、全体の戦略の方針を提案。

★生き残りの戦略として、
”一番商品””一番サービス”を一つずつ積み重ね、小商圏内で売上とシェアを高める戦略(半径300m~500mで生きていく)を提案しました。

重点施策の方向性としては以下の4つ
① 毎月の重点販売商品を決めて、「意識して売上をつくる」こと。その日の売上は単品でつくる(売上は単品の積み上げ)。
② 競合店を頻繁に調査して、生鮮各部門の主力上位商品は、「価格は同じでも、ボリュームと品質で勝つ」こと。
③ すべての商品に説明書きがあるくらいPOPによる情報提供で差別化すること。
⇒新規のPOP追加、定期的な入れ替えをサボるな!
④ 近隣半径500m圏内のシェアを徹底的に高めること(お客様ととにかく仲良くなること。名前を覚えろ)

施策①②では、惣菜部門が毎月新商品を出してお客様を飽きさせないよう売場を活性化。今日一日は○○商品でプラス1万~2万つくる。といった積み重ねを実行し、毎月の売上前年対比100%越えが3年以上続きました。

施策③では、初っ端は全部門のチーフが大小さまざまなPOPを目いっぱい取り付け、すぐにお客様から「最近店が変わったわね」と言われるように。この、お客様から見て、目で見てわかるくらいの売場や商品の変化があることが大事です。お客様に、店の変化がわからなければ意味がないからです。
しかし、新規POPの追加や古いPOPの入れ替えが継続しないんですよね。。。しばらくは珍しかったPOPもあっというまに「ただの風景」と化してしまいます。
ここで、男性と違ってサボらずにまじめにやるのが若い女性チーフ数名で、彼女たちの担当する部門は、菓子、日配、冷食、アイスですが、これらの部門は軒並み毎月売上の前年対比105%~130%越えを1年以上続けました。

やっていることは以下のとおり、POPと商品/売場メンテナンスの徹底だけです。
1.POPをつける
2.売れてる新商品は必ず入れてみる
3.欠品させない
4.常に前出し整理整頓
5.頻繁に商品の入れ替え(売れ筋、死筋)
大試食会をやった月などは165%(前年うるう年なので、営業日が一日分少ないにもかかわらず)。

そんなわけでPOPは女性にまかせた方が良いんですが、どうしてもPOPに書く言葉がでてこないという方のために次のようなPOP一言ヒントなども。。。

「ガッツリ肉を食べたい日のために、厚切りにしました」ステーキ用
「昔懐かしい辛塩仕立てでごはんがとまりません!!」塩鮭
「表面カリッと中はジューシーに食べるために、たっぷりの厚切りにしました」サーモンステーキ用
「ノーワックス・ノー防腐剤の皮ごと食べたいレモンで、塩レモンを手作りしませんか」
「“当店手作りの塩レモン”をつけて食べてください」鶏のから揚げ
「皮目ギリギリまで甘い!糖度12度を厳選しました」スイカ
「生でも食べられる野菜を集めました」ナス、かぼちゃ、カリフラワー、ピーマン、マッシュルーム、人参、大根・・・今夜はお家でサラダバー

また、最近の食品スーパーにとっては鮮魚部門の不振も悩みの種で、家庭でお魚をあまり調理しなくなったことも大きな外部環境のマイナス面ですね。
そこで魚のプロがおすすめするメニュー提案なんかもPOPの要素としては重要だということで魚屋のレシピメニューを提案しました。

やっていることは基本の徹底、戦術レベルの仕掛け、ちょっとしたテクニックなのですが、何事も継続させるのが一番難しいんですね。

Follow me!